一瞬ピクリと瞬きする。
その後、ゆっくり微笑んでから唇を震わせた。


『ありがと。ところで、ぁんた家は?!こんな時間なのに出歩ぃたらポリに補導されちゃぅわ。しかもさっきみたいな連中…今からゴロゴロうろつくゎよ?!。』


優しく、でもしっかりと諭す口調の女…涙が出てしまいそうだ。
言葉のはしばしから不安色が伺える。


“こんな何処の馬の骨かも分からない人間に心配をしてくれてぃる”


実の親からも受けたことのない暖かい台詞…
心の南極が溶けてしまう。



何時もの様に寡黙を返してしまう。返す言葉が見当たらないのだ。あたしの少な過ぎる言葉のタンスからは何も出てこない。只もどかしさの余り意に反する涙が自然に垂れてしまった。

悔しい、悔しい。泣くつもりなどなぃのに。
いっそのこと雨が全てを流してくれたらなら…こんな惨めな思いさえしなくてぃいのかも知れない。
静に思う。