『ふぅ。久々に声戻すとしんどいゎ。』



二度目にあたしの鼓膜に反響した男の声は…一気にソプラノまで音域を上げていた。
裏声かと思う程の声。
あたしは…再び目深を上げて仰いだ。

そこに立っていたのは、先程の勇ましい勇者の男だ。変化はない。
ますます状況が飲み込めないあたしのquestionの面を察知した男ゎ静かに微笑んだ。
まるで…マリア様の様な微笑み。過去に見た教会の暖かい天国みたく陽射しを浴びてキラキラ輝いていた、聖母様の様な…
クッキリと掘られた靨が艶やかだった。



『あっ、ごめんね。驚かせちゃったわね。男に戻ったの学生以来だったから…つい、興奮しちゃって…』


ふふっと、小さく笑う。


『えっ、あっ、でも…男…?.!!』


何も考えずに口に出した言葉は解読不可能な無静音となってポロポロと溢れ落ちた。
それさえも、雨の打ち付ける音の前に敗北してしまう。
必死に声を張り上げても、言葉と口数のタイミングが合わず腹話術人形みたくパクパクしてししまった。