「馬鹿ね!!」

中央広場で合流したティアには、血相変えて叱り飛ばされた。

「そんな上手い話ある訳ないじゃない!1070万の秘伝書を5万で!?騙されてるに決まってるじゃない!」

「え、え、でも…」

俺は狼狽するが、ティアはあっさりと断言した。

「私は中国拳法に関する知識には疎いけど、どうせ書いてある内容も秘伝には程遠いデタラメに決まってるわよ…かといって店にお金を取り返しに行った所で、もう店の主人は雲隠れしてるでしょうね。実際の所は、きっと金貨1万の価値もない紛い物よ、それ」

「……」

肩を落として、俺は溜息をつく。

安全な街の中でも、こうして初心者を食い物にする悪質な連中がいるらしい。

悔しくて、ティア言う所の紛い物秘伝書を地面に叩きつけようとして。

「……っっっ!」

それでも、なけなしの金をはたいて買ったそれを捨てる事はできず、俺は懐にしまう事にした。