何度かエイプ勢力圏の街を経由しながら、気球は二週間かけて空の旅を続ける。

これまで中国大陸、北米大陸、南米大陸と数ヶ月をかけて旅してきた道程。

それがこの気球だと僅か二週間。

つくづく古代遺産とは素晴らしいものだと思い知らされる。

そしてようやく。

「見ろよ、ティア!」

俺は気球の上から、眼下に広がる光景を指差す。

…深い谷を挟んで、巨大な都市が広がっていた。

谷の手前には繁華街。

他のエイプ勢力圏地域では見かけない、機械動力で走行する乗り物…自動車が行き交うメインストリートが見える。

モダンな建物が所狭しと立ち並び、俺が生まれ育った故郷の村とはまるで別の時代、別の国のようだった。

そして谷の向こう側へと繋がるのは、巨大な鉄橋。

大型トレーラーが渡ってもびくともしない、頑丈な橋桁が数十メートルもの谷底から聳え立っている。

それとは別に、時計台の機能も果たす優雅で気品ある煉瓦造りの塔の吊り橋も見受けられる。

その橋の向こうにあるのは、堅牢な構造の建造物。

頑丈でいて、豪奢な雰囲気を漂わせる建物…あれが皇帝の住まいだというのは、俺でも一目で分かった。

「ここが帝都…かつて人間の時代に『パリ』と呼ばれた、エイプの世界の首都よ」

ティアが言った。