途端に、あれ程獰猛に食いかかろうとしていたスミロドンが飛び退く!

…肉食獣は、予期せぬ口腔内への異物に驚愕する事がある。

だから、もし武器もなく捕食動物に襲われた時は、その口の中に手を突っ込んでやればいい。

そんな話を、故郷の村の猟師から聞いた事があったのだ。

効果覿面だった。

スミロドンは振り向く事さえせず、密林の中へと姿を消していく。

弱肉強食の世界で生きる捕食動物。

特に生態系の上位に位置するスミロドンからは、誰もが食われまいと逃げようとする。

それ故に、自ら口の中に手を突っ込むなどという予想外の攻撃を受けると、彼らは存外に脆いのかもしれない。