ガサガサと草木を掻き分け、音を立てて進む。

そもそもエイプが踏み入る事のない地域だ。

道がある筈もなく、まさに道なき道を進むといった状態。

湿度も高く、熱帯特有のジメジメした空気が体にまとわりつく。

…足を止め、額に浮かんだ玉のような汗を拭う。

どこかに水場はないものか。

呼吸が乱れ、苛立ち紛れに溜息をつく。

その溜息に紛れ。

「…?」

パキ…ガサガサ…。

小枝や落ち葉を踏み締めるような音が耳に届いた。

すぐに俺は身構える。

…何かいる。

ローチか?

或いはティアが上手く逃げ出して、俺を探して歩いているのかも。

そんな都合のいい想像をして振り向いた俺は。

「………っっ!」

茂みの中から出てきた猛獣と目が合い、絶句するしかなかった。