彼の言葉に、私は出会ったときの事を思い起こしてみた。あれは確か、ちょうど去年の今頃だったと思う……。思い出そうとする私の横で、彼はゆっくりと話を始めた。
「 …去年の今頃、
毎日同じ電車で見かけて片思いしてた女の子がホームで泣いてたからさ、チャンスだと思って俺はその子に声掛けたんだよ……」
「 ……え?」
「 …そしたらさ、泣いてると思ったその子は、花粉症で鼻かんでただけだって言うんだよ。」
「 っ!?」
……それって、私のこと…?
「 …お前が花粉症だったから、俺はお前に声を掛けることが出来たんだよ 」
彼が照れたように笑う。始めて聞いたその話に、私は信じられない気持ちでいっぱいだった。
「 …でも今考えると、泣いてるのと勘違いするとか、俺すげぇダサかったよなぁ… 」
言いながら恥ずかしそうに頭をかく彼に対し、私は首を横に振った……
「 ダサくないよ。…心配してくれて、すごく嬉しかったよ。」
声を掛けてくれたその時…、私はこの優しい彼に恋に落ちたのだから……