「 …アンタ、いろんな子にデレデレしてるじゃん。」
ようやく言い返せたその言葉に、またしても奴からの反論が返ってきた
「 デレデレ〜?俺がいつ誰にデレデレすんねん?」
不機嫌そうに私の顔を見つめるこの男に、いつもデレデレ話している子たちの名前を言ってやった。
すると…
「 あぁ〜、そらデレデレしてまうわ。」
なんと、信じられない事にあっさり認めたのだ。
「 最低っ!!大っっ嫌い!!」
掴まれたままの腕を振り払い、そう怒鳴りつける私。
そうして再び走り出そうとすると、今度は走り出す前に奴の腕のなかに捕まってしまった。
「 離してよっ!!」
抱き締められた状態で、その心地良い体温から逃れたくて、私はとにかく騒いだ。
「 離してってばっ!!馬鹿!!嫌い!!女タラシ!!…このっ、○○○○野郎っ!!!」
「 ちょっ、"○○○○"は言い過ぎやろっ!?つーか、女の子がそんな言葉公衆の面前で言うたらアカンってっ!!」
…激しくそうツッコミを入れたあとに奴は、小さくため息を吐き、雨で顔に張り付いたままの私の髪の毛を整えながらさっきの話の続きを言い出した。
「 あんな?俺があの子らにデレデレして話しとったのはな、オマエの話やからやで。」
「 はい…?」
訳が分からず思わず聞き返してしまった。
「 だから、オマエの話や。“彼氏でもないくせに惚気んな”て、いっつも言われとる…。」
そう言って笑ったその表情に、心臓が跳ねた。
「 …そういうわけで、そろそろ返事聞かせてくれへん?」
真剣な瞳がまっすぐに私を捕らえた。けれど、可愛くない私は、
「 ここじゃ無理。」と、そっぽを向いた。
今更だけど、よくよく考えたらここは道の真ん中だった。そんな私の言葉に、奴は嬉しそうな声を上げた…。
「 ほな、俺んちで雨宿りやな!!あぁ〜、やっぱなんもせぇへん自信無いわぁ~。」
そう言って笑う奴に、
「 ……ばか。」
私はそっぽを向いたままそう言って、握られた大きな手をぎゅっと握り返した……。
fin