【 あ ま こ い 】



 「 …あーあ、雨降ってきてもうたなぁ…。」

ざぁーーっと、激しい土砂降りの雨の音と、どこか嬉しそうな奴の声が、私の耳に入てくる……。

現在、私と奴は駅の出口で雨宿り中。

…そもそもこうなった原因は、奴こと…目の前のこの関西男にある。
休日の今日、私はこの男に半ば強引に遊びに連れ回されたのだ。そしてその帰りの電車を降りれば、予報外れのこの土砂降りの雨。まったく最悪な休日。

( 私の休日を返せ…。)
そんな風に恨めしく思いながら奴を睨みつけると…、

「 ん?上目遣いで見つめて、誘っとるん??」

ニヤけながらふざけたことを言ってきた。

「 …ばっかじゃないの?」

こんな男を相手にするの面倒に思う……。
…いつもいつも、私にちょっかいばかり掛けてきて、私に気があるのかと思えば、いろんな子にもこんな調子で喋っている。単なるタラシなのだ。…そうと気付く前、気があるのかと勘違いして意識してしまった私は、不覚にも奴を好きになってしまった…。
だから、奴に対しての私の態度はいつだってそっけない。そうして距離をとっていないとまた勘違いしてしまうからだ…。

今日のデート(?)だって…、嬉しい反面、奴の気まぐれにドキドキしっぱなしで、そんなドキドキしている自分が惨めで仕方なかった…。そんなわけで、今日はいつにも増して奴に対して可愛くない態度を取ってしまう。憎まれ口ばっかりで、本当に可愛くない…。

( こんな可愛くない私に、どうしてアンタは構ってくるの…?)

心の中でそう問いかけた。