――バシャンッ!
車から降りた足元が、そう音を立てた。ドアの下に水溜まりがあるのに気がつかなくて、私はそのまま水たまりにはまってしまったのだった…。
( 格好悪い。恥ずかしい…。)
お気に入りのパンプスに水が染みてくるのを感じるものの、そんな事を考える私には濡れた足元を気にする余裕はなかった……。
…できれば早く立ち去りたかったのに、この状況に気が付いた彼が車から降りて、タオルを持って私のところにまで来てしまった…
「 ……相変わらず、しっかりしているようで、実はドジだよな…。」
ふっと小さな笑みを浮かべた彼は、そう言いながら私にタオルを差し出した。
「 拭けよ。」
「 …大丈夫だよ、これくらい… 」
「 お前がよくても、俺がよくないの。」
そんな風に言われてしまい、私はおとなしくタオルを受け取り、濡れたところを軽く吹いていく…
……そんな私を見ながら彼は言った、
「 …なぁ、まだお前のことが好きだって言ったら、迷惑…?」
「 ………え? 」
一瞬、彼がなにを言ったのか私は理解出来なかった……。…その言葉はあまりにも突然で、 突然すぎて、…私は、何も言えずに固まってしまった。
「 ……やっぱ、迷惑だよな…。悪い。忘れて…… 」
なにも言わない私に、彼はそう言って、そのまま車に乗って帰ってしまった。彼が去って行ってしまった後も、私はしばらく呆然とそこに立ち尽くしていた。
……彼の言葉が、頭のなかに木霊する
"まだお前のこと好きだって言ったら、迷惑…?"
「 ……っ 」
ドキドキと加速する鼓動。それをごまかすように、タオルをギュッと握りしめた……。