「 …ううん。遠慮しとくわ。口臭なるやん?」

いくらなんでも、彼女が口臭かったらさすがの奴でも萎えるだろう…。


「 そっか…、」

私の言葉に、そう言って奴は差し出した白菜をおとなしく口に納めて飲み込んだ。…そして箸を休めて、じぃっと、あたしを見つめる……


「 …なに? 」

「 ……いや、失敗してしもたなぁと思って… 」

「 失敗…?なにが…?」

私が尋ねると、奴はまるで子どもみたいに拗ねたように口を尖らせて言った…


「 …だって、俺、キムチ臭いからキスできんやん。」


「 !? 」


…なにそれ 反則やわ……。


「 …や、別に…。あたしはキムチ臭かったて構へんけど… 」

若干の照れるので俯きながらそう言った…。


「 …ほんまに? 」

「 ……うん 」

…やばい。あたし今、絶対顔赤い… 。


「 ふ〜ん。ほな、遠慮なく 」

奴がそんなことを言い出すから、反射的に顔を上げれば


「 ……えっ? 」

奴の顔は間近にあって、そのまま テーブルを挟んでキスされた。

……キムチの味、



「 ……ふっ、普通、店のなかでするっ!? 」

「 ええやん。見えへん席なんやし。」

それにデート中やしな! と言った彼は、満面の笑みを浮かべている…。


( デート中とか言うくせにキムチ味って、どうなんよ…。…やっぱり、キスは辛いのよりも甘いのが欲しいわ…。)

そんな風に思ったあたしは結構乙女…?


…とりあえず、


「 すいませーん! 杏仁2つ追加で!!」

甘い杏仁豆腐を頼んでおくとしとこうか…。



fin