彼氏とのキス。どんな味?って聞かれても、あたしは答えられへんよ。だって、アイツとのキスは……



【キムチ・キス】


 あたしと奴のデートは、何故かいつも中華料理屋。


「 おんなじチェーン店やってもさぁ…キムチの味ってその店によって微妙に違うよなぁ… 」

そう言って、奴こと、あたしの彼氏は、綺麗な箸使いでキムチを自分の口に運ぶ…


「 この店のキムチは、あんま辛くないねん。」

「 へぇー… 」

…現在、デート中なのに中華をがっつり平らげています。 デート中なのに、話題はキムチです……。

( 色気ないわ~っ!!友達にこんなこと絶対話せへんしっ!!)
そう内心で嘆きつつも、あたしは愛想良く相槌を打っている。きっと惚れた弱みというやつだろう…。


「 そう言うわりには、いつもよりよく食べてるやんね!」

「 あー、そうかも…。辛すぎへんから逆に食べ安いんかもなぁ。」

せやったらキムチは辛すぎへん方が美味いのちゃうかな? と、そう言って奴はまたキムチを口に運ぶのだった……

デートなのにキムチの事ばっかり…。

( これはもはデートと呼べるもんなん!?)
と、そんなことをあたしが真剣に考えていると、奴はキムチの白菜を箸で掴んであたしに向けた。


「 食べる?全然辛ないよ?」

…夢にまで見た奴からの"あーん"が目の前にあるのに、あたしは口を開けない。だって、キムチやもん……