直子が2晩泊まって大阪に帰った日の夜、祖母が食事を取りながら「直子は私の若い頃にそっくりだ」と言った。「直子の結婚式には這ってでもいきたい」と言った。私は毎晩、その話を聞いてるふりをしながら祖母の背中をあおぎ続け、50年前の祖母と直子を結び付けようとしていた。それは電気屋の人が新しい扇風機を持ってくるまで続いた。


祖母は昨年の夏から寝たきりとなり、冬の間にその顔に死相が巣食った。祖母が最期の時を迎えようとしていることは明らかだった。

祖母が死んだら、あの日以来会っていない直子に会える。30歳を越えた直子の背中はまだ細くて白いだろうか。