「おねえちゃん!おねえちゃん!」と男の子に呼びかけられている事に気づいた時にはもう、その子は私の事をつんぼだと思って引き返そうと思っていた頃だったと思う。男の子は私がぼんやりしているのを見て、一緒に遊んだらどうかと言った。子供たちは、私に対し、遊ぶことを、命令した。こんな天気のいい日に一人でぼんやりする私をかわいそうに思ったのだろう。憐れみとは常に権力であり暴力であると思う。


強要されて、私はおずおずと大縄跳びの輪に入った。1回、2回、あっ。いつも私が引っかかってカウントが止まる。大縄跳びは4回以上続かなくなった。さっきまであれだけ気持ち良さそうに空を待っていた縄は、今はもう死んだようにぎこちなく動いたり止まったりを繰り返すだけだった。あの頃と一緒だ。私はちっともうまく飛べず、悲しい気持ちになってメソメソと泣き出した。

女の子があわてて、なわとびは飽きたから別のことしよって、その場を取り繕うように言った。優しい彼女はリーダー格なのだろう、男の子に物置から何か取ってくるように命令した。男の子は面倒そうに階段を駆け上がっていった。


男の子が取ってきたのは、フラフープだった。


フラフープは1周も回らなかった。女の子の優しさに答えられない私は本当にみじめだった。本来空中にあるはずのフラフープは私の領域を円で囲い、周囲と私の世界を隔てるものとなった。聖域の中で私はしゃがみこみ涙をとめどなく流した。私の世界のアスファルトは色を変え、それはやがて境界線であるフラフープに届いた。

あの頃と同じ、真っ赤な目で子供たちを見つめたら、あの頃の彼らが、私をからかうようにへらへらと私を見下ろしていた。なんで私、こんな天気のいい日に泣いてるんだろう。何もかも放り出して逃げてしまいたいと私は思った。



長い髪で目まで隠れた男の子が私にまっすぐ近づいてきた。男の子は他の子と違って無表情で、おねえちゃん、ひっかかってるよ、って私に言った。なに?って思ったけど声に出ないまま、男の子は私から何かをひきはがした。ビリビリと破ける音がして、私は背中に痛みを感じた。私は半狂乱で男の子をひっぱたいた。女の子が手に持っていた縄跳びを落とし、泣き出した。