誰もアタシの気持ちなんかわかってくれなかった。

みんな、自分には関係ない、そう思ってるから。
だからこそおもしろ半分で言葉を交せたのだ。

そんな中での、先輩の言葉。


「ありがとうございました…」

「何言ってんの?俺は思ったこと言っただけ。…つか、俺ん家前に離婚したから…。」

辛いこと。体験しなきゃわからないこと。――親の離婚――

彼は痛みを知っているから、こんなにも人に優しくできるのだろう。


周りにいた人とは、正反対だった。
先輩との出会いは、温かい衝撃になった。


先輩は、それ以上は語らなかった。だけど最後に


「俺は3年の藤ケ谷翔太。えーっと?」

「アタシは…1年の……神崎美優…です。」

「そんじゃあ、美優ちゃん、バイバイ。」

先輩は小走りで階段に向かって行った。

「…んぱい、先輩。ホンットにありがとうございました。」

アタシは、そう叫んで大きく礼をした。

先輩はちらっとこっちを見て、また走って行った。


周りにいた、あの人達はもう、先輩の言葉を聞いて逃げて行って、いなくなっていた。