「そんなに泣くと目ぇ腫れんぞ」
抱きしめる腕の力を緩めた樹は、泣くあたしの顔を覗き込んだ。
「樹のじゃんっ」
「は?俺?」
樹は泣かれるのに慣れていないらしく、泣くあたしの前でただ立っているだけ。
けど頭を掻いて、どうしたらいいのか迷ってる様子も伺えて、それが可愛いって思えた。
さっきまでの重い雰囲気はなくて、和やかな雰囲気になった。
「そんなに泣くなよ。悪かったって」
もう明らかにめんどくさそうにそう言う樹。
辺りはすっかり暗くて、落ちた視線の先にはうっすら樹のくつが見えるだけ。
樹が困ってるのが可愛いしおもしろくて、しばらく泣いていようかなとか思ってしまった。
そしたらグスッグスッと鼻をすするあたしに、ついに樹が反撃に出た。
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