「もし、さ?」
「あぁ」
「引っ越しの話が無かったら、あたしに気持ち伝えようって思ってなかった?」
「分かんねぇ」
抱きしめる腕に力を入れる樹。
「でも、きっかけが何だろうと付き合えたから関係ねぇ」
「……」
「だから奈緒には引っ越すこと、分かってほしい」
そりゃあ最初はびっくりしたけど、今はだいぶ落ち着いてきた。
おばあちゃんには元気でいてもらいたいし、樹や樹の家族の気持ちも分かる。
離れちゃうのは嫌だけど、今までが近かったから不安になっちゃうだけ。
もう二度と会えないってわけじゃないんだし、ずっと幼なじみやってきたあたしたちなら大丈夫だって信じてる。
「あたしなら大丈夫だから」
「あぁ」
「だから、いってらっしゃい」
あたしは笑顔で言えた。
だからか、笑顔で言えた自分にホッとしてまた涙が出た。
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