「引っ越すことになった」
嫌な話なんだろうなって、予想はできてた。
だってあたしの目を見てくれない。
下を向いたまま。
樹は着てるジャージのポケットに手を入れて、だるそうに立つ。
「どういう、こと?」
だるそうに立つのは樹の癖で、でも今は明らかにこの話を話したくないオーラが出てる。
「俺の親父の母さんが……まぁ俺のばあちゃんが、1ヶ月くらい前に倒れたんだよ」
「…え、」
「じいちゃんいねぇから、ばあちゃん1人で住んでて、今はまだ入院してんだけどもうすぐ退院するから、また1人暮らしすることになって」
「……」
「ばあちゃんは施設に入るって言ってんだけど、親父たちが施設だけは入れさせたくないって言ってて」
「うん…」
「倒れたばっかで1人暮らしなんか危ねぇし、だから親父たちと話し合って………ばあちゃん家に引っ越すことになった」
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