最後に部屋に入った樹がドアを閉めると、
「奈緒ちゃん、じじぃがごめんね?」
申し訳なさそうに拓海くんがそう言った。
「え、全然大丈夫だよ?びっくりはしたけど……元気そうなおじいちゃんだね」
「ほんとごめんね。あの糞じじぃ若い女の子大好きだから、いつもあぁやって誘ってんだよね」
「そうなんだぁ。でも安くしてくれるからいいじゃん」
あれくらい元気なおじいちゃんの方が、逆に親しみやすいし。
そりゃあ最初はびっくりしたけど、もう2人とのやり取りを聞いて、慣れてしまった。
それに問題はおじいちゃんより、今この空間にいる赤髪の方だと思う。
拓海くんの『そうだけど……』という言葉を遮って、
「つーか早く歌おうぜ。時間が勿体ねぇ」
イライラした口調でそう言った。
それに対して拓海くんは『だなだな』って明るく返して、拓海くんが最初に曲を入れて歌い始めた。
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