「奈緒ちゃーん!」



あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。



それは、どこかで聞いたことがある声で………。



一度止まり声のする方を振り向くと、そこには不良たちがたくさんいる。



「奈緒ちゃん!」



その不良たちの中からひょこっと顔を出したのは、昼休みに声をかけてきた拓海くんだった。



「拓海くんかぁ」


「え、名前もう覚えててくれたの?」


「え?うん」



名前くらいすぐ覚えられるのに、嬉しそうにそう言う拓海くん。



「なに名前覚えててくれただけで顔赤くしてんだよ!」


「は?別に赤くしてねぇよ!」


「拓海のやつ照れてるー!」


「だから照れてねぇって!」



少し怒り気味の拓海くんを、友達は躊躇(ちゅうちょ)なくからかってる。



あたしの方に顔を向けてくれてないから、あたしには顔が赤いかどうかなんて、さっぱり分かんない。



それに何で照れてるのかすら分かんないのは、あたしだけなんだろうか。



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