「奈緒」
樹が甘い声であたしの名前を呼ぶ。
それがあたしには、『近くに来い』って言ってるように聞こえて、
あたしは樹に顔を近づけた。
すると、樹はあたしの後頭部を押さえ引き寄せると、唇を重ねた。
こんなにキスしてくるってことは、樹ってキスが好きなのかなー…なんて、
樹に角度を変えながらキスされてるときに思っていたら。
「なっ…」
いつの間にか、あたしは樹の膝の上に跨いで乗っていた。
スカートを履いてるから樹からパンツが見えてないか心配で、急いでスカートの裾を引っ張る。
「パンツ見えねぇよ」
あたしのその行動を見て、樹はあっさりそう言う。
「ねぇ、降りたい」
「何で?」
「何でって……。そんなの、恥ずかしいからだよ」
「どこが?」
「ど、どこがとかの問題じゃなくて、樹の上に乗ってるっていうこと自体が……恥ずかしいの」
それくらい気づいてよ、バカ。
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