「あたしね、今すごく思うの」
なんか一件落着したら、樹にどうしてもある言葉を言いたくなった。
樹はタバコを吸い終わり、ソファーにもたれ掛かっていて、
あたしは体を乗り出すようにして樹の方を向いた。
樹は優しい表情で、まるで『ん?』とでも言うように、あたしの言葉を待ってくれてた。
「樹を好きになってよかったなぁって」
幼稚園に入るとき、あの日樹が隣の家にたまたま引っ越して来なかったら、
あたしたちはきっとこんな関係じゃなかった。
たぶん好きになることもなかったと思う。
だって幼なじみっていう大きな特権があったからこそ、ほんとの樹を知って、心から樹を好きになれたんだもん。
叶わないと思ってたあの頃は、辛くて苦しくてどうすればいいのか分からなくてもがいて悩んで、
一晩中泣いていた夜もあった。
時には少し話せただけで、嬉しくて幸せで温かくなって胸がキュンってして、
何気ない平凡な日が楽しくてしょうがない日になったこともあった。
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