缶の落ちた音が響き渡り、あたしは咄嗟(とっさ)に拓海くんの肩を押して突き放した。




今………何が起こったの?




唇が離れた今でも、まだ唇に拓海くんの触れた感触が残ってる。




状況がいまいち把握できなくて、頭が混乱する。




「ごめん…」


「……なんで?」


「……」


「なんで、キスなんか……」




あたしの中で拓海くんは、もう諦めてくれたんだって勝手に思ってた。



あたしと樹のことを応援してくれてるんじゃないかって思ってた。




でもさっき拓海くんの今の気持ちを言われて、そうじゃないって分かった。




だけど、キスだけはしてほしくなかった。


それだけはしてほしくなかった。




拓海くんはあたしから数歩離れて、ブロック塀に腰を下ろした。




「奈緒ちゃんの口から聞きたくないんだ。……他に良い人がいるなんて」




キスされたことがすごくショックだった。


だけど拓海くんが辛そうな声でそう言うから、あたしも拓海くんから数歩離れたブロック塀に腰を下ろした。




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