拓海くんは、あたしのことをそんなに見てくれてたんだ。
こんなあたしの恋を、一瞬で見破ったんだ。
「……で、気づいたら好きになってた。樹と両思いだって知ってても」
気のせいかもしれないけど、拓海くんの声がさっきより小さくなっていってる。
「奈緒ちゃんにフラれて。諦められたつもりだったんだ」
「……」
「だけど、気がつくと目が奈緒ちゃんを追っててさ、」
「……」
「やっぱ、好きだなぁって」
拓海くんの目を……見れない。
だってあまりにも拓海くんが、まっすぐな目であたしを見るから。
「だから、奈緒ちゃんだけには言われたくなかった」
「……」
「女の子みんなに優しいわけじゃないよ」
「……」
「紳士なわけでもない」
静かに吹く風の音と、虫の音しか聞こえないくらい、あたしたちの周りは静かで。
少し向こうでは、何かで盛り上がっているのか、梨花子たちのはしゃいでる声がかすかに聞こえる。
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