どうやら樹の話によると、



体育祭のとき莉加ちゃんは年上の彼氏とケンカして上手くいってなくて、


そのときにケンカしてないあたしと樹を見て、ムカついたらしい。




あたしを見に来たっていうのも嘘で、ほんとに見に来たのはモデルの紫音で、


あたしが“ついで”だったらしい。




樹を好きになった理由もその場で思いついた嘘で、


樹のことはほんとにただの相談相手にしか思ってないそうだ。




莉加ちゃん本人に聞いたわけじゃないからほんとなのかは分からないけど、


樹がそう言うんだから信じようと思う。




「…でも、何で抱き合ってたの?」




すっかり涙が引いたあたしは、いつものトーンでそう聞いた。




「莉加のやつ、親父さんにまた殴られて新しいあざ作ってた」


「……」


「抱きしめてって言うから、仕方なく抱きしめた」




その後に『けどもうしねぇ。お前以外はもう抱きしめねぇ』と加えた樹は、


珍しく少し照れてた。




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