あたしは急いで涙を手で拭い、樹に背を向けて座った。
背を向けたあたしに、樹はお得意のため息をつく。
その後に樹は独り言のように、
『泣かせたのは俺か』と呟いた。
背中越しだけど、樹が体を起こして座り直したのは分かった。
「あいつ……莉加さ、親父さんに虐待されてんだよ」
でも、いきなりそんなこと言い出すから、あたしはどんな反応すればいいのか分かんなくて。
……莉加ちゃんが虐待?
かなり動揺した。
「虐待っつっても、毎日じゃねぇんだけど」
「……」
「たまに親父さんが酔っぱらって帰ってくる時があるらしくて、」
「……」
「その時に殴られたりいろいろ暴力受けてて、腕とかあざだらけなんだよ」
なんとなく分かった。
今樹は、樹と莉加ちゃんだけしか知らない秘密を話してくれてるんだって。
でもそれは、思ったより重く、あたしが聞いていいのか分からない話だった。
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