あたしにムカついたんだと思ってたのに、ムカついた相手はあのチャラ男2人だったようで。
「お前にムカつくわけねぇだろ。また余計なこと考えてんじゃねぇよ」
「だ、だって…」
「だってじゃねぇよ。いつでもこうやって俺が助けられるわけじゃねぇんだぞ?」
もしかして樹は……心配してくれてるのかもしれない。
それより、まだ引っ張られてる頬が痛い。
視線で“痛い”と訴えても、樹は離そうとしてくれなくて、だけど少ししてから離してくれた。
それからしばらく沈黙が続いて、沈黙を破ったのは樹だった。
「怪我、してねぇ?」
「怪我?うん。大丈夫だよ」
「何もされてねぇ?」
「うん。何もされてないよ」
その時の声はもう、冷たさも怒りも感じなくて、ほんとに優しい声だった。
だから涙は完全に引っ込んだ。
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