樹を驚かせようと思ってここまで来たのに、結局は樹に迷惑をかけることになってしまった。
ほんとにあたしは樹に迷惑をかけてばっかり。
ちっとも役にたってないし、彼女らしいこともしてあげられてない。
「もう連れてかれるんじゃねぇぞ。マジでムカついたから」
だから樹にムカつかれてもしょうがない。
でも、今のは結構グサッと来た。
幼稚園の時から樹と幼なじみやってるから分かる。
いつもと声が違うこと。
すごく……声が冷たいこと。
泣いてもどうしようもないのは分かってるのに、また涙が出てくる。
そんなあたしを見て、樹は『はぁ…』と呆れたようにため息をついた後に、こう言った。
「お前にムカついたんじゃねぇよ」
それは優しいようで怒ってる声だった。
「お前をここに連れてきたあいつらにムカついたんだよ。だから泣くな」
更にそう言って、あたしの頬を引っ張った。
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