「おい」


「はいっ!」




だるそうにこっちに近づいてくる樹。



見なくても怒ってるのが分かる。




「校門の前にいるならまだしも、何でここにいんだよ」


「うっ…」


「どうせナンパされて嬉しくて、気ぃ抜いてたら無理矢理連れてこられたんだろ」




樹の言ってることは完全に当たってて、あたしは言い返すことができなかった。




樹という彼氏がありながら、ちょっとでもナンパされて嬉しいって思った自分が恥ずかしい。




きっと樹は呆れてる。


だってこんな簡単にあたしは見ず知らずのチャラ男に連れてこられたんだもん。




「ごめんなさい…」


「マジであいつらはやべぇんだよ。本気で何するか分かんねぇ」


「はい…」


「俺がたまたまいたから良いけど、いなかったらマジでヤられてたかもしれねぇ」


「……」




改めて事の重大さに気づいた。


危機感が全然無くて、まさかこんなことになるなんて思ってなかった。




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