もしや、と思って聞いてみたら。




『女?あぁ、あいつは女だな』


「あ、そうなんだ」




あたしの知らない女の子を、ちょっと親しげに“あいつ”と呼ぶ樹の声が聞こえた。




そりゃそうだよね。

男女共学の高校に通ってるんだから、女の子がいるのは当たり前だもん。




心配しなくてもいい。




樹が他の女の子と話してるのは今までたくさん見てきたし、


他の女の子とのあたしが知らないこともあるって知ってる。




今さら考え込む必要はない。

あたしは彼女なんだから凛としてればいい。

自信を持つことが大事なんだよね。




だからその時はいったん考えるのは止めることにした。


……だって、樹を信じてるから。





樹が引っ越してから2週間が経ち、2回目の土曜日が来た。




その日はあたしたちの学校の体育祭が行われる日で、樹は前日の夜に来ることを約束してくれた。




そして当日、2年生が綱引きをしている最中に、


1年生全員がクラス別に座ってる校庭の端に樹が歩いてくる姿が見えた。




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