そして、振り返って目が合う。
「奈緒」
あたしの名前を呼ぶ大好きな声。
少し歩けば手の届くところにいる、愛しい人。
その人があたしの名を呼ぶ。
「お前だけが好きだ。これからもそれは変わらねぇ。だから自信持て」
そして、どこまでも優しい人。
「調子に……乗ってもいい?」
「あぁ」
「もっと大好きになっちゃいそうだけど……いい?」
「ばーか」
あたしの言葉に樹はそう返して改札に切符を入れ改札を通ったけど、
横から見える耳がほんのり赤くなってるのにあたしは気づいてた。
ホームに降りる階段に行くまでに1度こっちを振り返ったから、あたしは元気よく手を振った。
樹の後ろ姿が見えなくなるまで樹のことを見続けていた。
お互いに……これから新しい生活が始まるんだ。
樹はほんとに知らない場所で新しい生活が始まるわけだけど、あたしだって樹がいない新しい生活が始まる。
けど、2人別々なわけじゃない。
2人で新しい生活を歩んで行くんだ。
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