変わるはずがない。

例えどんな試練が待ち受けていても、今のあたしなら大丈夫な気がする。




「ねぇ、樹?」


「ん?」


「大好き」


「知ってる」




樹はいつもみたいにそう言ったくせに、あたしの腕を掴んで引き寄せて、


みんながいるのに触れるだけのキスをした。




すると周りのみんなは騒ぎ始めたけど、今日だけはしょうがないかって大目にみてくれた。





「そろそろ行くわよ」




樹のお母さんのその言葉を合図に、みんなはそれぞれに樹に声をかけた。




そんな光景を見てても、もう不安に思うことはなかった。




あたしは大丈夫。

あたしなら大丈夫。

心配いらない。




「気を付けてね」


「あぁ」


「夜、電話してね?」


「あぁ」




樹のお母さんとお父さんは既に改札を通っていて、樹はというと改札口の前まで行った直前で止まった。




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