そんなこと思ってたら、勝手に涙が出てきてた。




「え、奈緒ちゃん?大丈夫?」



俯(うつむ)いたあたしに、沙絢ちゃんが心配そうに声をかけてきた。



「沙絢、ちょっと向こう行っててくれる?」



そんな沙絢ちゃんに紫音はあたしの気持ちを察してくれたのか、他の場所に行くように頼んでくれた。




樹のお父さんやお母さんも見送りに来た知り合いの所に行ってるから、今はあたしと紫音で2人きり。




だから余計に涙が溢れた。




「紫音…っ」



あたしが紫音に抱きつくと、紫音は優しく背中を擦(さす)ってくれた。




離れたくない。

そばにいてほしい。

もうわがまま言わないから。

泣かないように頑張るから。




それくらい、樹は大好きな人。




その時だった。


誰かがあたしたちに近づいてきたのに気づいて、誰が来たのかも近くまで来た足元を見て分かった。




「仕事帰りにわざわざ悪いな」




………樹だ。




1番樹に泣いてることを知られたくなかったのに、こんな早い形で知られてしまった。




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