何度も何度も樹を諦めようとしたけど、やっぱり諦めることはできなかった。
他の女の子と話す樹を学校で見つけて、勝手に妬いたこともあった。
話せなくても、姿を見れるだけで嬉しくなるときもあった。
些細なことがすごく嬉しかった。
それくらい樹のことがずっと好きで、
他の男の子と付き合ったことはあったけど、実をいうと樹を忘れるために付き合ったのが理由だった。
学生時代のほとんどが樹で埋め尽くされていた。
樹が好きで好きで、仕方がなかった。
けど行かないでなんて言えない。
ううん、むしろ行ってほしい。
具合が悪いおばあちゃんのためならしょうがない。
だからこそ、ちょっとある行かないでの気持ちは言えない。
けど、あたしはずるい。
もうすぐ樹が電車に乗って遠くに行ってしまうっていうのに、こういうときに限って、
………夢だったらいいのに、って思ってしまう。
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