「奈緒がそんなに俺とシてぇって思ってるなんて知らなかったよ」
だからこう言われるのも仕方がない。
でもこれ以上誤解が生まれないように、あたしは絶対諦められない。
まだ樹に押し倒されてる形でも。
「そ、そんな事言ってないじゃん。あたしが言ったことは……その、あの、」
「なんだよ」
「冗談だよ!樹が寝てるから、調子に乗って言っちゃっただけで」
「知ってる」
「えっ?」
誤解を解こうと必死なあたしに対して、この男は意外とあっさりと白状した。
樹のことだから、もっとつっこんできてからかうのかと思ってたし、
何かしらされるんじゃないかとか勝手に想像してた。
なんて、樹にまた言ったら、あたしが何かされたいんじゃないかって思われそうだから、絶対に言わないけど。
でも、本音を言うと何かされるんじゃないかって、ちょっと期待してた自分もいたりする。
だって明日引っ越しちゃうんだよ?
もう……こうやってふざけることもできないのに。
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