最後まで言えなかったのは、寝てたはずの樹があたしの腕を掴んで引っ張って、あたしを押し倒したから。
あっという間に押し倒されたあたしの上には樹がいて…………、そうなったのはほんの数秒だった。
お風呂を出たばっかの樹は髪の毛を乾かさなかったのか、樹の髪の毛から滴(しずく)が落ちてきた。
「……起きてたの?」
「あぁ」
「い、いつから?」
「『やっぱり樹があたしを襲うなんてありえないよね』ってとこ」
それを聞いて、あたしは今すぐにでもどこか穴に入りたいって思った。
ううん。
この際どこでもいい。
この場から逃げることができるなら、どこでもいいから隠れたい。
それか、できることならさっき言ったことを全部無かったことにしたい。
ほんとに今のあたしには“後悔”しかない。
だって“やっぱり樹があたしを襲うなんてありえないよね”ってとこから聞いてたってことは、
最初からあたしの独り言を聞いてたってことになるんだよね。
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