「樹ー。この子お前に用なんじゃねぇの?」


「…あ?」



だけど親切な樹の友達がそう言ってくれたおかげで、


立ち上がった樹は手にしたボールを蹴ることを止めて、あたしに視線を移してくれた。



移してくれたのはいいものの、


あからさまに、“何でいんだよ”とでも言いたげなめんどくさそうな顔をする樹。



しょうがないじゃん。

自転車の鍵が無くて困ってるんだもん……。



すると、樹はボールを適当にその場に置いて、壁に寄りかかってる数人の間を通り、あたしの前までやってきた。




「何だよ」



顔と声と体全体から“めんどくさいオーラ”を出す樹。



そもそも樹があたしの自転車を借りなきゃ、こうやってこの渡り廊下に、あたしが来ることも無かった。



樹もめんどくさい顔をしなくてよかった。



でもその原因を作ったのは他の誰でもない、樹。



なのにどうしてこの人は、こんなにも機嫌が悪いんだろう!




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