最初は突然樹にモデルをしてなんて言われて困ってたけど、
何回も手を合わせて頭を下げながら『お願い!』と言う沙絢ちゃんを見てたら、なんだか可哀想になってきた。
もしかしたら沙絢ちゃんも、誰かに代わりのモデルになる人を探してきて、と頼まれたのかもしれない。
そうだったら、きっとモデルをするのも今回限りのことなんだろうし、
沙絢ちゃんには色々お世話になってるから…………ここはあたしから樹にお願いするしかない。
そうと決めたら、あたしは沙絢ちゃんに一言『ちょっと待ってて!』と言って、
樹の腕を掴むと無理矢理引っ張り、使われてない薄暗い空き教室に入った。
腕を掴んだ手を離し、教室のドアを閉める。
「こんなとこに連れてきて何企んでんだよ」
振り返ると、そこにはやっぱり眉間にシワを寄せてあたしを見てくる樹。
「モデルやって!」
「は?」
「あたしからもお願い!モデルやって!」
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