だけど沙絢ちゃんは俯いて、なんだかまだ話があるようで………




あたしが『どうしたの?』と聞くと、沙絢は『実はね……』とそのまま話を続けた。




「男の子のモデルの1人が風邪ひいちゃって、今モデルが1人足りない状態でね?それで………樹くんにお願いできないかなぁ……って」


「え、樹に?!」


「うん。だめかなぁ?」




沙絢ちゃんは樹に向かって申し訳なさそうに言い、『お願い!』と何回も手を合わせた。




もちろん樹はあからさまに困った顔をしていて、目であたしに“どうにかしろ”って訴えているみたいだった。




「でも……何で樹なの?」


「何で?そりゃあ樹くんかっこいいからだよ。だって、いかにもモテますって顔してるじゃん?」


「え?」


「だから、ね?樹くんお願い!」




初対面じゃないにしても、初めて話すに近い2人なのに、沙絢ちゃんはなんのためらいもなく、樹の制服の裾を掴んで引っ張った。




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