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バイトを始めだして、三ヶ月ぐらいが過ぎた頃、もう季節的には夏真っ盛りで、汗水たらしながら、必死に働いていた。
何度生ビールを注(つ)いだことだろう。
それくらい暑さが酷い夏だった。
あたしはたまに切っては、苛々を抑えたり、両親から逃げていた。
自傷が当たり前になりつつあった夏に。
あたしの試練は始まっていたのかな。
ガラガラガラ。
のれんを潜(くぐ)ってきた本日最初の人は、貴方だったね。
「おー、お前かー。最近仕事はどうだー?」。
なんて具合に店長はまるで我が子のように貴方と接していたね。
「うーん、ぼちぼちかな」。
苦笑しつつも、どこか安堵していた表情の貴方。
他のバイトの先輩も、挨拶したり、話をしたりとで、場の空気は盛り上がっていた。
貴方はにこにこしつつ、それに応じていた。
そこに居ても違和感なんて無かったな。
まぁ、いつもどおりの注文だったけど。
貴方は焼酎のキープボトルを入れていたんだった。
それを水かお湯で割って飲むのが、貴方流。
ホールをしていたあたしは注文を聞いて、なんとか作ってみた。
が、しかし。
世の中そんなに甘くない。
「んー、これはちょっと濃すぎるかもー」。
と、苦笑交じりに呑んでいたね。
軽く、付け出しや、つまみを食べながら、携帯をチェックしていたり。
店長たちとの談笑で盛り上がっていたり。
注文されたメニュー品を持っていくと、有難うと、にこりと微笑まれ。
その時に香る貴方の匂いがあたしを安心させていたのだろう。
惹きつけられてしまった、恋が走り出す、五秒前。
キープしている焼酎に付けられていた、札の名前には、「ミスターU」の文字。
そこで初めて、恋してしまった貴方の下の名前を覚えました。
バイトを始めだして、三ヶ月ぐらいが過ぎた頃、もう季節的には夏真っ盛りで、汗水たらしながら、必死に働いていた。
何度生ビールを注(つ)いだことだろう。
それくらい暑さが酷い夏だった。
あたしはたまに切っては、苛々を抑えたり、両親から逃げていた。
自傷が当たり前になりつつあった夏に。
あたしの試練は始まっていたのかな。
ガラガラガラ。
のれんを潜(くぐ)ってきた本日最初の人は、貴方だったね。
「おー、お前かー。最近仕事はどうだー?」。
なんて具合に店長はまるで我が子のように貴方と接していたね。
「うーん、ぼちぼちかな」。
苦笑しつつも、どこか安堵していた表情の貴方。
他のバイトの先輩も、挨拶したり、話をしたりとで、場の空気は盛り上がっていた。
貴方はにこにこしつつ、それに応じていた。
そこに居ても違和感なんて無かったな。
まぁ、いつもどおりの注文だったけど。
貴方は焼酎のキープボトルを入れていたんだった。
それを水かお湯で割って飲むのが、貴方流。
ホールをしていたあたしは注文を聞いて、なんとか作ってみた。
が、しかし。
世の中そんなに甘くない。
「んー、これはちょっと濃すぎるかもー」。
と、苦笑交じりに呑んでいたね。
軽く、付け出しや、つまみを食べながら、携帯をチェックしていたり。
店長たちとの談笑で盛り上がっていたり。
注文されたメニュー品を持っていくと、有難うと、にこりと微笑まれ。
その時に香る貴方の匂いがあたしを安心させていたのだろう。
惹きつけられてしまった、恋が走り出す、五秒前。
キープしている焼酎に付けられていた、札の名前には、「ミスターU」の文字。
そこで初めて、恋してしまった貴方の下の名前を覚えました。