僕の方が強くなきゃいけないのに。
しっかりしなきゃいけないのに。
君を支えなきゃいけないのに。


泣かずにはいられなかった。
君の言葉を聞きたくなくて僕は耳を塞ぎうつむいた。


「こうちゃん、ちゃんと聞いて?」

首を振って拒否した。

「こうちゃん・・・お願い・・・・
あたしだってこんなこと・・・
言いたくないよっ!!」


はっとして顔を上げ君を抱きしめた。
もう邪魔をする点滴さえ無くなっていた。


『のん、ごめん・・・ほんとごめん・・』

「こうちゃん?
あたしの幸せはね、こうちゃんに幸せになってもらうことだよ?
だからね、ちゃんと恋して、幸せな結婚してね?
あたしを追いかけちゃだめだよ?」

『無理だよ・・・』

「だめ。約束して。
でもあたしのこと忘れないで?
時々でいいから思い出して?」

『忘れるわけ・・ないだろ?
忘れられるかよ・・・』

「そうだね。
5年間ずっと一緒だったもんね。」

『これからもそばにいてよ・・・』

「いるよ?あたしはずっとこうちゃんと一緒だもん。」


そう言って君はキャビネットを指差した。

「中に箱が入ってるから、開けてみて?」

引き出しを開けて箱を取り出した。

『これ・・・』

「早く開けて?」

引き出しの中には明らかに指輪が入っているだろう箱があった。
開けると中にはシルバーリングが入っていた。


「ちょっと奮発。」

君は笑顔でそう言った。