重そうな扉の前に来た。
看護士さんは一礼すると去っていった。

扉の上には赤いランプがついていた。


『こんなのドラマでしか見ないと思ったのに・・・』

「座りましょう?」

お母さんは近くにあったソファに腰掛けた。


「康介くん・・・」

『はい。』

「あの子の父親もがんだったの。」

『え?』

思わずお母さんを凝視してしまった。


「2度も同じ病気で家族を失うなんてね・・・
憎まずにはいられないわ。
2人とも若いのに・・・」

『まだのんは死んでません!!』

僕は思わず大声をあげ、立ち上がってしまった。

「でもあと1ヶ月よ?」

お母さんが目に涙をいっぱい溜めてこっちをみた。


僕は黙って座ることしか出来なかった。

君がもうすぐ消えてしまう。
信じがたい事実を受け入れることは出来なかった。

たとえ君がどんなにもろくなっても、君がいなくなるなんて考えられなかった。