「嫌じゃないよ?」
私は恥ずかしさで今にも泣きだしそうだった。
「ねぇ・・・」
「うん?」
『俺に真の全部ちょうだい?』
言葉が出てこなかった。
つまりその…
キス以上のことをする。
そういうことだよね?
「俺、真が好きなんだ…」
そう言って私のお腹をそっとなでる陽。
「あ・・・」
思わず声が出てしまう。
好き、そう言われただけで体がどうかしちゃそうだ…
『愛してる…』
今度は耳元でそう囁かれる。
「やっ…」
私はどうしたらいいのかわからなくて何も言い返せない。
『もう一度言う、俺に真の全部をちょうだい?』
傷の手当てをするはずだったのに
どうしてこうなったのかわからない。
でも今の私には
コクン
うなずくことしかできなかった。
それから私たちは
『愛してる』
陽にずっとそう言われながら初めての夜をともにすごした。
私も陽に負けないくらい
『愛してる…』
意識が続く限り、そう言い続けた。
私にとっての初めての夜はものすごく甘くて
どこか切なくて、ちょっぴり激しかった…
「おはよ」
「おっ、おはよ」
次の日の朝、目覚めると目の前に陽の顔があった。
昨日のこともあってかあまり直視できない。
「お前意識しすぎだろ?」
「だっ、だって…」
私が柄にもなく顔を赤く染めると
「朝からそんな顔するなよ…またシたくなるだろ」
「な、何言ってんの?!」
陽から問題発言。
やっぱりこいつ変態だ…
「そんなことより…」
「何?」
「お前賭けに負けたな」
賭け?
そう言えば・・・
「そんなのあったっけ?」
「とぼけるな」
人差指でおでこを押される。
「これはもう俺の勝ちだよな?」
「うっ…」
私の勝ちなんて言えるはずがない。
だって私にとっての勝ちは陽を好きにならないことだから・・・
「負けを認めるな…?」
この問いに黙ってうなずくことしかできない私。
悔しいけど
自分の気持ちに嘘はつけません。
「素直でよろしい」
「別に…」
「まぁ負けたってことは何か罰ゲームしてもらわないとな」
そう言って不気味に笑う陽。
「はっ?!そんなの聞いてない」
「だって言ってないもん」
いやいや…
言ってないならやらなくていいじゃないですか。
むしろやっちゃいけないんでは?
「まぁ、変なことはしないから安心しろ」
「余計に怪しいんですけど…」
「まぁお前にとっちゃ嫌なことかもしれない…」
そう言って切ない顔をする陽。
その目はどこか遠くを見ているようだった。
「嫌なことなの…?」
「たぶんな…。難しいことではない」
「ふーん」
なぜだかわからないけど陽は何をするのかを
まだ私には教えたくないようだった。
そして私も、このことにはあまり触れないほうがいい
自然とそう思った。
「来月俺と出かけて欲しい。そのときに詳しく話すから」
「わかった…」
「約束してくれ…何があっても俺から離れるなよ?」
急にそんなことを言う陽に戸惑う私。
いきなりそんなこと言われてもドキドキするだけで言葉が出てこない。
「何があっても俺が守るから…」
そう言って私を抱きしめる陽。
なぜだかわからないけどその瞬間不安が頭をよぎる。
その不安が何だったのか
それから数週間後に私は自分で実感した…
あっという間にその日はやってきた。
あれから1週間ほど学校を休んだ私はすっかり元気になっていた。
「よし行くか…」
「うん」
結局いまだに行く場所を伝えられていない私。
正直不安で仕方がなかった。
そして不安が顔に出るたびに
「大丈夫だ…」
陽が私の頭をなでて不安を消してくれた。