私の王子様-社長【完】





「あんた、その性格なおした方がいいよ?」


「そう?」


「せっかく顔はいいんだから」




って、私何を言ってるの?


怒ってるのに何褒めてんの?


あぁ~うちの馬鹿…




「それ褒め言葉?」




陽はなぜか嬉しそうに聞く。




「知らない」


「ふーん」




陽はちょっとつまらそうな顔をした。










「今日はとりあえず寝ろ…そうだ明日からマンションで暮らすから」


「は?」




今なんて言った?


明日からマンションで暮らす。


えっと…私この家にきて一日もたってないよね…


うんと、何が起きたわけ?


私は陽の言っていることが理解できずひとりで戦っていた。




「本当なら来週からマンションで暮らす予定だったけど、どうやらお前にはこの家は広すぎるみたいだし、毎晩泣かれても困るからな」


「うるさい」




言葉ではそう言っても少し喜んでいる自分がいた。


会って間もない人に心見透かされているというのに。




「それからお前には学校に通ってもらうから」




陽はいきなり話が飛ぶ人だと思う。


どっから学校の話が出てくるのだろう?








「名前は東陵学園。制服とかは準備しとくから」


「はぁ…って東陵学園?!」




東陵学園ってかなり有名な私立校。


お金持ちって本当に怖い。


受験すらしてない私を簡単にいれるなんて…




「まぁ頑張れ」




そう言って陽は私の部屋を出ていった。




「変なやつ…」




陽って絶対に多重人格だと思う。


優しいと思ったら急に冷たくなる。


面倒なことは嫌いってタイプだと思う。




「まぁ私には関係ないか」




私はそれからふかふかの布団をかぶって


深い眠りについた…







そういうわけで私はあの日からマンションに住み始めた。


ただおかしい点が一つある。


いや2つだった…




まず




「なんで2人きりなわけ?」




次に




「なんで同じ部屋なのよ!!」




こいつの考えてることが本当にわからない。


なんで一緒に暮らすだけならまだしも


一緒に寝ないといけないの?!



しかもその理由は




「俺、冷え性だから添い寝してくれる人が必要なの」




って私は温めるためだけにあんたと寝るわけ?


それにあなたは普段使用人と寝てるんですか??


明らかに下心見え見えでしょ…




「そういうわけだから…」




その日そう言って陽は仕事に出かけた。







「もう何なのよ…」




その日から本当に私は陽と一緒に寝た。


でも意外に陽が手を出してくることはなかった。


まぁ女に不自由しているようには見えないし


こんなガキを襲うほど馬鹿じゃないか…



それに私は一緒に寝ることに不快を感じてはいなかった。


何かされるわけでもないし


久しぶりに感じる人の温もりも悪いものではなかったから…


別に陽だからとかそういうのじゃない。




「よし行くぞ」



そんなこんなで私が東陵学園に入学する日がきた。


陽は仕事があるらしいから送ってくれるだけ…


陽の仕事は何かって?


それがさ…


私も知らないの。


まぁ相当すごい仕事をしてるってことはわかる。








だってあの豪邸だし?


しかもこのマンションも超のつくほどの高級マンション。


その最上階でエレベーターを開けると


そのままお部屋に到着だよ?


まぁ相沢家の息子なんだから


会社のお偉いさんってことはわかるけど…


本当に何やってるんだろ?




「何ぼーっとしてんだ?はやくしろ」


「はいはい」




まぁこんな奴のことなんて興味ないからいいや…


世の中にこんな変態男に騙されている女がいると思うと


本当に馬鹿だなと思ってしまう。




「ってまた何考えてんだか」




あいつの女のこと考えるなんて


私もどうかしてる。










「お前大丈夫?」


「なっ」




こんなやつに大丈夫?なんて言われたくない。




「準備できた?」


「うん」


「よし行くか」




私は黙って陽の後ろをついていく。



背高いな…


私も160あるけど陽は180ちょっと?


肩も意外にガッチリしてるし


脱いだらすごそ…


ってまた私何を考えてるんだ!!


私はいつからこんな変態になったの?


ダメ…


こんなやつの裸なんて想像しちゃ!!



まぁ大事なところはそこじゃない気もしたが…




「朝はなるべく送ってくから」


「別にいいよ。朝早いでしょ?」




私は車を運転している陽の横顔をちらっとみながら答える。












「遠慮すんなって!ほらついたから降りろ」


「へいへい」




言われなくたって降りますよ…




「あっ忘れてた」




後ろからそんな声が聞こえたと思ったら




チュッ




誰かが私にキスをした…


誰か?


誰かじゃないこれは…




「あんた最低!!」




陽だ…


私は思いっきり車のドアを閉め


校門を勢いよく通って行った。




「もうなんなのよ!!最悪…最低!!」




きっと周りから見たら頭のおかしい生徒だったろう。







そして私の機嫌がなおらないまま


入学式は終わってしまった。




ちなみに私のクラスは1-A


いわゆる優等生が集まったクラス。


まさか私をこんなクラスにいれるなんて…


陽の馬鹿!!



このクラスが嫌だったのは別に勉強ができないからではない。


自慢じゃないけど中学は常に一位だったし…


まぁ全てあの女のためなんだけどね。


一位とったら誉めてくれるんじゃないかって思って


一生懸命勉強した。


友達も作らずただひたすら勉強した。


でもあの女は


やっぱり私の期待には応えてはくれなかった。