この状況ですら息苦しくて、辛くて仕方がないというのに…。
拓海と少しばかり関わった彼とは、とても平常心で話せそうに無くて。
ソフトドリンクを飲み干すと、バクバクと早鐘を打つ鼓動を沈めようとしていた。
こんなモノで落ち着くのであれば、誰も苦労はしないと分かっていても。
それでも今の私は、頼りない藁にでも縋りたい気分だったのだ。
すっかり空となったグラスが汗を掻く様を、投げやりに眺めていれば…。
「ここ、いいかな?」
「…っ、え…」
「久しぶりだな、蘭?」
「っ・・・」
聞きたくなかった声が近くで聞こえると、思わずその方を向いてしまった。
「すみれー、悪いけど…。
俺と席、変わってくんねぇ?」
「はぁー、何でよ?」
角に位置する私の隣には、必然的に菫しかイナイのだけれど。
「ちょっとだけ、蘭と話したいんだよなぁ…」
「えー、ヤよね、蘭…?」
菫は私の表情を読み取ったのか、機転を利かせて尋ねてくれて。
「っ…、いま菫と話してて…、ゴメンね…」
気まずさと蠢く感情の苦しさから、視線を泳がすように彼を遮ってしまう。