授業の内容も全然頭に入らず
昼休みになると由美は
すぐに教室を飛び出した

佑の教室の前までくると
また前回と同じように
緊張してきて胃がキリキリと痛んだ

由美はゴクッと生唾を飲み込んでから
勢いよくガラッと扉を開けた

しかし中には佑の姿はなく
しかたなく近くにいた
地味そうな男子を捕まえて

「秋沢君知りませんか?」と
尋ねてみた

その男子は
一瞬目線を上に向け
考えるそぶりを見せたあと
「多分、購買にパンを買いに行ってるんじゃない?」

と自信なさそうに言った

由美は
「ありがとっ」と
短く言い残し、購買へと向かった

購買に着くと
そこはまさに戦場だった

とにかく人の数が尋常じゃない
購買のおばさんも汗をかきながら
必死に対応していた

由美は人混みを掻き分けながら
佑の姿を探したが
どこを見ても確認できなかった

由美は
「入れ違いで教室戻ったのかな」
と勝手に判断し
「早く行かなきゃ」
と慌てて人混みを抜け出した

その時

ドンッ

「痛っ」
由美は何か、いや誰かにぶつかり
ヘタッと尻餅をついてしまった

「も〜誰よ、こっちは急いでんのに..」
由美は苛立ちながら
スッと立ち上がって、そいつの顔を見た

「あっ」
由美は驚いて目を見開いた

由美の前に立っていたのは
佑だった

「由美ちゃん?ゴメンね、大丈夫?」
と佑は言いながら
由美の肩や腰についた埃を
パンパンと掃った