「銀のせいじゃないの……」
あたしが勝手に銀の言葉や態度に一喜一憂しているだけ。
「じゃあ何で泣いてんの?佐奈、こっち見て?」
銀はあたしの頬に手を添え顔を近づけた。
少しでも動けば唇が触れ合ってしまいそうな距離。
「……っ!」
銀にもっと触れて欲しいよ。
もっと銀に触れたいよ。
距離が近づくたびに欲張りになっちゃうよ。
頬には銀の熱が感じられて。
その熱を感じながら出会った日のことを思い返していた。
『人間見た目だけじゃないって』
見た目とギャップのありすぎるその性格も。
何気ない優しさも。
笑った時に見える八重歯も。
大きくて温かい手も。
涙を流すあたしを見て本気で慌てているその表情も。
あたしは……出会った日から、銀に心を奪われていたんだ。
「もう……大丈夫だよ」
「そっか。よかったよかった」
銀はふっと笑いながらあたしの頬から手を離した。
「じゃ、行くか」
銀の手は頬から離れてもすぐにあたしの手を掴んだ。
それが嬉しくて。
銀に手を引かれ歩いているうちに、頬に伝った涙はいつのまにか乾いていた。