「お母さん、この子猫の名前ってしーちゃんだったよね?」


子猫を拾った事も失ったことも鮮明に覚えているのに、何故か名前の由来だけどうしても思い出せない。


「そうよ。佐奈が突然『ぎん』って名前を付けたいなんて言い出すから、お父さんが『それじゃ味気ないし、シルバーにしよう』って喧嘩になって。結局間を取って『しー』になったのよ」


ぎん。


……銀。


母の口から出たその名前にドクンと心臓が高鳴る。



「そういえば、しーちゃんを拾ったのは12年前の今日だわ。その日に写真を見つけるなんてなんだか運命的ね」


母はそう言うと、写真の中のしーちゃんを懐かしそうに見つめた。