「佐奈!早くしないと翔太君帰っちゃうよ?」
昨晩徹夜して作ったチョコの包みにそっと視線を移す。
今日はバレンタインデーだ。
「……そうなんだけどさぁ」
どうしてもあと一歩のところで足がすくむ。
ずっと想いを寄せていた隣のクラスの翔太君。
あたしは渡す予定のチョコをギュッと抱きしめたまま、身動きが取れずにいた。
全く面識のないあたしがチョコを渡したら、翔太君はどう思うだろう?
喜んで受け取ってくれる……?
それとも……
「もう!早く行くよ!!」
「ちょっと待って!まだ心の準備がぁ……!」
痺れを切らした真理子に腕を掴まれ、あたしは隣のクラスまで無理矢理引っ張っていかれた。