虚しく、尚人の部屋に響き渡るテレビの

人気タレントの声が

私の気持ちを落ち着かせてくれた。

「あの…さ、香奈ちゃん。」

「何?」

まだ少しだけキツイ感じの言葉。

でもさっきよりは、柔らかい感じがした。

「尚人…、風邪ひいてんの?」

声…、出ないくらいなら

相当ヒドイはずなのに―

「え?風邪なんて、ひいてないはずなんだけど…。」

「あれ…。え?だって…、
尚人、声……。」

「あぁ…、お兄ちゃんから聞いてないんだ?」

「え…?何を?」

聞いちゃいけない気がした。

だけど…、

だけど……、どうしても知りたくなって―

「香奈ちゃん、教えて。」

香奈ちゃんは飽きれた顔をして、

重い口をゆっくり開いた。

「お兄ちゃん、障害持ってんの。
生まれつきなんだけど…、耳と口。
喋れないし、音が聞こえない。
喋れないから、手話で話してたり携帯で話すの。
声とか音、聞こえないけど、相手の口の動きで
言葉を読み取ってるの。」

「え…。」

言葉を失った。

胸が急に締め付けられて、苦しくなる。

障害。

喋れない。

声が聞けていない。

生まれつきの障害…。

涙が滲んだ。